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「財の無体化と財の法」

先日読んだ仮想通貨の論文で紹介されていた森田宏樹「財の無体化と財の法」を読みました。

 

この論文の特徴として、まず、カテゴライズ・概念の切り分けが精緻です。
大きいところでは、無体物を権利とそれ以外に分けている点、所有権について客観的理解と主観的理解として紹介する点、その明晰な切り分けが、本論考の背骨となっています。
また、個人的には、権利以外の財産について、物のイメージと人のパブリシティ権を対置して分析しているに感動しました。

 

結論として、権利に所有権を認める見解は法主体への帰属関係という主観面を所有権として括りだしており、むしろ権利の帰属主体性の問題として捉えるべきではないかという主張がされています。
そして、本報告では、排他的帰属関係として問題となるものについて最後に「素描」として触れられています。

猿としては、むしろこの部分をもって、「所有権」という従来有体物に認められてきた理論を無体物にまるっと借用できないかという考え(猿としては無体物に所有権を認める議論にはそのような動機があるのではないかと思われます…)に対し、より細かく議論をすべきだというNOを突きつけているように思われます。

 

なお、読者の感想としては(愚昧な猿なので理解できていないのかもしれませんが)、そもそも「本報告では、フランス法の学説状況をそれ自体として詳しく検討する余裕はないが、考察の発想源として、フランス法の検討から得られた知見をモデル化して、分析の基軸を設定するために用いている」ということは最初に断られているのですが、フランスでの議論状況から紹介された理論の由来について気になりました。

フランスは所有権理論を無体物まで進めており、勇気があるなぁということが印象に残りました。